322 一部相続人が応答してくれず、遺産分割手続が止まってしまった事例
事案の概要
・Xが当事務所依頼者、Yが遺産分割の相手方、Aが被相続人
・●は、相続人、被相続人ではなく、既に死亡している人、
・○は、相続人、被相続人ではなく、生存している人
・横線は婚姻関係を示し、縦線は親子関係を示す(実線が実親子、点線が養親子)
- ①
- 被相続人Aが亡くなった。相続人は、Y1~3とX。
- ②
- Y1及びY2が弁護士に依頼し、遺産分割調停を申し立てた。なお、Aの遺産は不動産と預金。
- ③
- ところが、Y3が遺産分割調停に出てこなかったために審判に移行。不動産については、Y1これを取得して他の相続人に法定相続分相当の金員が支払われる旨の審判(代償分割の審判)が下され、預金については、当時の判例に従い審判対象とならなかった。
- ④
- その後、Y1及びY2の弁護士から、預金を払い戻すことを目的として、その存在確認を求める訴えを提起されたため、Xは当事務所に相談。そのような訴訟をしたところで、誰も被相続人の預金の払戻しができない上に、Y1及びY2の弁護士が事件処理を中止したこと及びY1からの代償金が支払われていないことから、受任。
問題になった点と、当事務所における事件処理
①問題になった点
Y3と連絡がつかない以上、相続人全員で遺産分割協議書を作成し、それによって預金を払い戻すという方法を用いることができないところ、どのように払い戻しを受けるべきかという点が問題になりました。
受任後の処理と結果
当時の判例によると、預金は遺産分割審判の対象とならなかったことから、本件のように連絡がつかない相続人がいる場合には、金融機関に対して法定相続分相当額の払戻しを請求するしかなかったところ、受任後、直ちに銀行に対して払戻請求をし、実際に払い戻しを受けることができました。
加えて、その処理の中で、Y1及びY2によって、Aの死後に預金が払い戻されていたことが発覚したため、同人らに対し、払い戻した金額の法定相続分相当額の支払いを求めるとともに、Y1に対しては、不動産の代償金の支払いがなされていなかったため、その支払いを求めました。さらに、A名義の貸金庫が発見されたため、銀行と協議した結果、Y3の関与なくこれを開扉することになり、相当数の動産が発見されました。
以上の結果、不動産の代償金の支払いを受けることはできましたが、Y1は預金の払い戻しの件については支払いを拒否し、かつ、Y1の資力には問題があったため、訴えの提起は断念しました。
以上